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AI時代の外国語教育 その苦悩と模索(三)

人民網日本語版 2019年01月10日10:24

人民網ではこのほど、「AI時代の外国語教育 その苦悩と模索」をテーマとする小野寺健氏による連載をスタート。小野寺健氏は特定非営利活動法人日中友好市民倶楽部の理事長を務めるほか、長年にわたり数多くの中国の大学で日本に関する教育指導を行い、「淮安市5.1労働栄誉賞」や「第二回野村AWARD」、「中国日語教育特別感謝賞」などを受賞しているほか、人民日報海外版では「中日友好民間大使」として紹介されている。

 

第三章 外国語を極めるには?

外国語が母国語を超えることは難しいので、外国語能力を高める早道は、逆説的ではあるが、母国語の能力を高めることが肝要となる。

夏目漱石と森鴎外を例に挙げると、彼等は四書五経を始めとする漢籍に親しんでおり、彼らの優れた言語能力が、イギリスとドイツ留学に於いても、開花したと思われる。

辞書の無い時代だったので、森鴎外は、フランクフルト出身で特異なスペルであるGoetheを、「ギョオテ」と表記し、斉藤緑雨から「ギョオテとは、俺のことかとゲーテ言い」と揶揄されたが、その格調高い美文調の翻訳は、現代に於いても、読者を魅了し続けている。

そして、二人の素質の高さもさる事ながら、言語習得の原動力は、国費留学生としての使命感と「情熱」にあったと思われる。

なお言語学的には、日本語を専攻するか、第二外国語として選択することは、中国人学生にとって、理に適う選択とすでに前述しているが、「好きこそ物の上手なれ」もまた一つの真理なので、語学上達の鍵の一つである「情熱」と考え合わせると、好きな言語を選ぶことは、自己の人生を豊かに彩ることになる。

これに対して、就職や進学に有利な言語を選ぶと言う選択は、ロシア語の衰退からもわかる様に、トレンドや時代の激変には脆いので、あまり薦められない。

では外国語を極める上でどういった点に心がければいいのだろうか?

「小春日和」を例に挙げると、英語の直訳は「老婦人の夏」となり、日本語を鵜呑みにすると、春の穏やかな日和を想像するが、この英語表現は、正に旧暦の十月を指す異称を的確に表しており、小春という言葉は、晩秋から冬に使われる季語だということを自覚させてくれる。

また、海鼠のドイツ語を直訳すると「海の胡瓜」となり、これもまたより実物に肉薄をしている。

そして、高校時代に読んだ湯川秀樹の「旅人」の中には女の子を意味するドイツ語の「メッチェン」という表現があり、該博な旧制高等学校生は、若い女性のことを、「メッチェン」と称し、学生間の隠語として使い、教養を競い合っていた。なお、筆者の高校時代の号は、「メッチェン傾れ」であり、その嗜好は、老境に至っても変わっていない。

かくて、複数の言語を学ぶことで、言葉と物事の核心に迫り得るので、この様な視点で外国語を学べば、学びの過程は、知的な喜びに満ちたものになるといえるだろう。

「学問に王道無し」や「ローマは一日にして成らず」と言われるが、筆者が知っている中で「天才」と呼ぶに相応しい存在は、アラビア学の井筒俊彦だ。彼は四百ページに及ぶ原書を易々と丸暗記をするなど、アラビアの文化と習俗に習熟しており、現地の専門家と対等な議論が出来たほどだと言われている。

そして、漱石は、「I love you」を、「月が綺麗です」と訳したが、この様な名訳をする豊かな感性の持ち主を育てることが、筆者の理想とする教育だ。 

「人民網日本語版」2019年1月10日

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